来週、今冬最初の寒波が襲来するらしい。
日本酒の世界には、「寒造り」という言葉がある。
酒造りをする側としては、だんだん良い季節になってきた。
そもそも、日本酒造りは、冬季に行うものである。
そして、「寒造り」とは、酒造りに最も適しているといわれる12月から2月頃までの寒い時期にかけて、酒造りを行うことを指す。
一般的に、日本酒造りをするとき、発酵をガンガン旺盛にすることは、ご法度である。
というより、お酒があまり美味しくなくなってしまう。
だから、低温で緩やかに発酵させる必要がある。
気温の暖かい時期の仕込みは、「冷やす」という作業は非常に大変だ。
一度発酵の力が出てしまうと抑えることはなかなか難しい。
電気も大量に必要になるし、結露も発生しやすく不要な雑菌との闘いも必要になってくる。
逆に、冷えた状態から加温するという方向は、まだやりやすい。
だからこそ、寒い時期の仕込みが基本になる。
↓6000Lタンク上からの新酒の様子。瓶単位ではわかりにくいが、数百リットルのお酒が集まると、新酒特有の”青冴え”がしっかり確認できるようになる。
たとえば、仕込み段階では、タンクの中の液体が10℃未満という状態を目指す。
昔は、冷蔵設備などは当然無い。
今でこそ、低温の環境を人工的に実現することができる装置や設備が増え、「四季醸造」も出てきたが、全国的にはまだまだ寒い時期の「寒造り」が基本である。
温暖化の影響もあり、秋口でも仕込みができていたものがだんだん難しくなってきた。
序盤は、道具やタンク、建物などをはじめ、蔵人の作業面でも感覚を取り戻し今季の米の様子を見極める期間が必要になる。
そうして、「蔵を慣らしていく」必要がある。
高級酒の大吟醸や出品用のお酒など、最も心血注ぐ本番のお酒は1月・2月の時期に仕込むことが多い。
当蔵でも続々と新酒が搾れてきた。
本格的な冬の季節到来とともに、より一層気を引き締めて酒造りをしていきたい。
西堀酒造六代目蔵元:西堀哲也