12月は酒造期・出荷のピーク時期が並行する、再繁忙期だ。
例年だと、忘年会や新年会はじめ酒の消費量は大きく増加する。
ただ、今年はコロナ禍で業界全体の消費量は落ち込んでいる。
大人数での宴会、飲み会も制限されている。
年末の忘年会や新年会が中止になってしまったところも多いのではないだろうか。
酒造りは、半年で一気に造って半年で売る、そんなサイクルであるから、特に飲食店における需要が激減した今年は、生産数量を減らさざるを得ない蔵がほとんどだ。
現に、酒米が大量に余ってしまう現象が発生し、酒米を食米として売るといった状況にまでなってきている。
例年であれば回転していたはずの在庫が回転せず、全国各地の酒蔵には在庫が積み上がっているのが実情だ。
参考記事:
チャーハンで日本酒を救う?酒米に忍び寄る危機
↑搾って直ぐのお酒の様子(垂桶・垂れ口)
近年、新酒でフレッシュで即詰め即出しというお酒が良しとされてきた風潮があったが、
こうした背景からも、ここにきて熟成感のあるお酒やブレンドタイプのお酒も浸透していくことになる。
たとえば、昔は搾ってすぐのお酒は日本酒ではない、といわれる時代もあったようで、
最低半年以上寝かせ、角が取れてからの市場流通が当たり前だった時代もあったそうだ。
また、いくら原料や規格が同じであっても、タンク毎に全く同じ酒にはならない。
タンク別で造り分け、各々のタンク毎に酒にするタイプが近年は一部流行していたことは確かだが、
タンク毎の味の微妙な違いを吟味して、調合(ブレンド)することは、従来当たり前に行われていたことで、
むしろ近年の流行は長い歴史の中では稀有な状況ですらあったようだ。
このように、トレンドや嗜好は時代の変化・世の中の流れとともに、移り変わる。
2050年までの排出量ゼロが現政権において宣言され、中国をはじめ西欧諸国、さらには脱炭素に否定的だった米国ですら脱炭素にシフトする方針が打ち出された現状は、見過ごしてはならない世の中の流れである。
ただし、下記の記事にあるように、脱炭素の実現は、並大抵のことでできることではない。
自動車業界では、1企業ではおろか、業界全体でも不足で、国家を挙げての取り組みが必要になるとのことだ。
トヨタ社長 vs 日本政府…「脱炭素」をめぐるバトルで「これから起きること」
醸造を再エネシフトする、といっても、簡単なことではない。
ピーク時から3分の1にまで縮小した日本酒需要の落ち込み、さらには直近のコロナ禍を背景として抱える中で、
醸造器具や工程の見直しから、投資コストや費用対効果等、高いハードルはいくつもある。
酒蔵は全国に1300~1400あるが、そのほとんど(約1100蔵以上)が小規模の酒蔵(地酒メーカー)に分類される。
どうすれば多くの酒蔵が再エネ醸造へ一歩踏み出せるようになるのか。
SAKE RE100では、取り組みに向けて現在進行中である。
西堀酒造六代目蔵元:西堀哲也