産業革命以降、人類の技術躍進は、かつての資源を燃焼によって掘り起こし、CO2として現代に蘇らせてきた。
加速度的進歩による生産と消費は、人類史上最も大きなエネルギー発散をもたらした。
気づけばそれは、未だかつて無い、地球規模の環境問題として顕在化してきたことが指摘されている。
石油、石炭、LNG(液化天然ガス)。
火力発電で使われる主な資源である。
これら資源は、100万年から数10億年単位の蓄積が基となる。
人類史を遥かに凌駕する時間軸(地球史)の単位で考えれば、確かにそれらは”再生可能”であろう。
しかし、高々数万年も経たない我々人類にとって、
大いなる自然に対する原理を再考する時が来ているのは確かだ。
稚魚の成長を待たずに乱獲し尽くせば、そこに魚は現れることはない。
適度に余力を残して「ほどほどに」自然の恵みを頂戴することで、
生態系は持続・安定し、翌年も再来年も魚を捕り続けることができる。
自然にはそれぞれ、相応の時間軸がある。
乱獲、過剰投資、大量生産、買い溜め、叩き売り。
本来、自然の摂理では無縁であったものも、
投機や商機、人間社会固有の「観念」が、自然のサイクルを狂わせる。
果たして、本当に今までの価値観は正しかったのだろうか。
そんな問いが我々現代人に、突きつけられている。
「1人1人の意識が世界を変える」
そんな言葉、にわかには信じがたいと思うかもしれない。
しかし、現実を動かしているのは、需要と供給の経済理論ではなく、個々人の「意志」である。
さらに、たった1人の決断や行動が歴史を変えてきた事例は枚挙に暇がなく、特に現代は「下から」の時代である。
個々人の意志とは本来、大きな力を秘めたものである。
SAKE RE100では、個々人が「SAKEから環境を考える」そんなきっかけになることを目指したい。
もちろん、肩肘張った強烈な意志のようなものである必要は、まったくない。
むしろ、適量の酒は心身を自ずから和らげ、リラックスさせることだろう。
土壌、水、稲、自然の恵みを受け、地域社会と歴史ともつながる文化的産品。
寒い季節を待って日本酒造りを行う「寒造り」をはじめ、醸造シーズン明けの田植えなど、
自然と呼応した時間軸を残している日本各地の酒蔵は、まだまだ多い。
酒瓶や酒器を見つめ、ふと大いなる自然に思いを馳せる。
大地の恵みを五感で味わい、対話する。
SAKE RE100では、そんなブランドをつくっていきたい。
西堀酒造六代目蔵元:西堀哲也